2024年6月26日水曜日

2024年株主提案研究 File 03 遠藤照明

2024年株主提案第3弾は6932_遠藤照明です。

遠藤照明は購入候補になりうる銘柄であるため、少し注目して見ていました。

遠藤照明の株主提案

株主提案日:不明

株主提案受領発表日:見解発表日同日

会社見解表明日:2024/5/21

株主総会日:2024/6/26

提案者:個人株主

株主提案内容:

①剰余金処分の件

今期実績EPSの1/3を配当金に回せという提案です。提案理由は以下の通り。

  • 過去5年間の配当性向は、平均値が16.9%、 最大値が23.1%、最小値が 10.0%と 2023年3月期決算の上場企業の平均配当性向約35%を大きく下回る水準で推移している
  • 低い配当性向を継続することは過大な手元資金の抱え込みにつながり、インフレによる価値の目減り、無理な資金運用による投資損失を招き余計な財務リスクを発生させる可能性がある
  • 当社は、コーポレー卜ガバナンスポリシーの「当社の資本政策及び株主還元」において「獲得した利益については、その3分の1ずつをそれ ぞれ、株主還元、従業員及び内部留保金に分配することを基本方針とする。」と記載している
    • 自らが定めて外部関係者に宣明した基本方針を特段の理由なく長期間にわた って遵守しないことは、当社がコーポレー卜・ガバナンスを重要視していないとの印象 を関係者各位に与えかねない行為であり、早急に配当性向の適正化を実施すべきと考える

②自己株式取得の件

1年以内に、取得価額の総額 1,600 百万円を限度として金銭の交付をもって当社普通株式を取得することを提案しています。

今期の実績純利益は4,649百万円なので、①の提案と合わせると総還元利回りは70%弱となります。提案理由は以下の通りです。

  • 適切な自己資本比率を維持し WACC を妥当な水準に保つことで、有効な財務リスク管理と中長期的な企業価値向上を両立することができるとの考えに基づいた提案である
    • 中長期的な自己資本比率の目標値を 50%において安定的に資本政策を運営することで中長期的な企業価値の向上を図ろうとするものである
  • 単発の自己株式の取得ではなく、明確な資本政策にもとづく継続的な自己株式の取得が当社の中 長期的な企業価値向上に資すると考えて提案する
  • 過大な自己資本を確保することは、WACCの上昇により企業価値を引き下げる効果を持つのは、コーポレー卜ファイナンス理論の教示するところである
  • 当社の自己資本比率は、2019年3月期から2023年3月期の5年間に41.3%から55.0%へと着実に上昇している
    • コロナ禍の数年間を含め一度も営業赤字に陥ることがない安定度の高い事業運営となっており、自己資本比率50%を目標として資本政策を実施することは、 十分に保守的な財務運営であると考える

③定款一部変更の件(取締役の人気の短縮)

取締役の任期を2年から1年に変更することを提案しています。提案理由は以下の通り。

  • 東証上場会社コーポレート・ガバ ナンス白書 2023によると、定款上の取締役の任期1年の会社 の割合が 2014 年 56.9%より2年ごとの調査の度に増加して 2022 年には 65.2%となり、 全体の2/3を占める
  • 世界的な議決権行使助言会社であるISSは、「原則として賛成を推奨する」と2024年度版日本向け議決権行使助言基準に記載しており、 近い将来、大多数の上場企業が取締役の任期を1年とするものと考える
  • 取締役任期短縮は、コーポレート・ガバナンスコードへの対応が単なるお題目としてではなく、経営の機動性、取締役会の監督機能の強化を目指す実効性のあるものであるとのメッセージを発信する効果があ
以上が提案内容です。

個人株主からの提案ですが、たんなる個人とは思えないほど勉強されています。ファイナンスの知識に加え当社の方針等もきちんと理解していると思われます。

特に提案①はとても説得力のある内容となっており、会社の反論が気になります。

さて、その気になる会社の反論は以下の通り。

まず提案①については反対で、その理由として以下のように説明されています。

  • 利益の最大化が経営目標。獲得した利益で財務体質と経営基盤の強化を図るとともに、 安定的な配当の維持及び適正な利益還元を行うことが基本的な考え方である
  • 当期純利益の3分の1に相当する配当は、物価上昇及び為替変動リスク等のある経営環境の中、今後高い成長の見込まれる海外事業拡大を含めた中長期的な成長の実現に支障をきたす恐れがある
    • 中国の製造子会社である昆山恩都照明有限公司は設立 20 年を経過し再投資の時期に来ており、生産能力増強に向けた成長投資を検討開始しており、また英国 ANSELL 社においてもさらなる成長の為、欧州域内での販売拡大に向けた成長投資を検討している
  • 将来に亘っての安定した株主還元を困難とする懸念を生じさせる
よくある回答に終始するのかと思いましたが、海外事業への投資計画はある程度具体的に記載されています。「純利益1/3」だとなぜダメなのかの説明は不十分で説得力に少しかけますが、可能な限り説明しようという気持ちは感じられます。

提案②については、自己株式取得の重要性は理解しているが、「当社株式の取引状況及び株価を踏まえながら、将来の成長に向けた投資とのバラ ンスを考慮した上で、適切な時期に行うべき」とのこと。「今じゃない」というのが会社の解答ですね。

③については、「株主提案と同一の内容を会社提案として提出する。提案理由は違うけどね。」とのこと。

したがって本提案は、「取締役の経営責任を明確にし、経営環境の変化に迅速に対応できる経営体制を構築するた め、取締役の任期を2年から1年に短縮する」という会社提案・株主提案という扱いに変わりました

「株主提案に賛成」というものを見てみたかったですが、これはこれで良い対応だと思いました。

さて、6/26に行われた株主総会での決議結果は以下の通りでした。

株主提案①、②→否決

株主提案③→(会社提案・株主提案として)承認可決

決議通知


結果は残念でしたが、とても勉強になる株主提案でした。

会社の主張する海外事業拡大が実際に実施されるかどうか、しっかり見ていきたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿