今日も昔の記事の焼き直しです。
10年以上前になりますが、日本の株式市場をざーっとデータで概観した記事を書きました。
この記事を最新のデータで焼き直してみます。
当時の記事によると、2013年4月時点での日本株は以下のような状況でした。
実績PER:26.3倍(世界平均:16.3倍)
実績PBR:1.5倍(世界平均:1.9倍)
ROE:5.70(世界平均:11.66%)
配当利回り:1.61倍(世界平均:2.25倍)
PERや配当利回りは世界平均と比較すると40%ほど割高、という状況でした。10年以上経過した今、このあたりの数値はどう変わったのでしょうか。残念ながら参考にしていたウェブサイトは2023年9月以降データが更新されていないので、2023年8月の数値となります。
実績PER:14.6倍(世界平均:17.8倍)
実績PBR:1.4倍(世界平均:2.7倍)
ROE:9.58%(世界平均:15.16%)
配当利回り:2.25%(世界平均:2.13%)
10年前とは様変わりしています。
日経平均株価は3倍近くに上昇したにもかかわらず、PER、PBR、配当利回りのいずれも割安方向に変化し、かつ、世界平均と比べても割安という状況です。たんに日本の株式市場に資金が流入しバブったという訳ではないことの証左と言えるかと思います。なお、配当利回りは上昇しているものの、配当性向(=配当*100/EPS=配当利回り*PER)は32.85%(世界平均:37.91%)とむしろ低下していました。配当利回りの上昇は、東証のPBR改善要請に起因するものと想像していましたが、実際は単に株価水準の低下に起因するもののようです。2023年8月のデータなので、東証のPBR改善要請の影響はまだ目に見えていないのかもしれないですね。ROEもかなり改善し、伊藤レポートの目標水準である8%を大きく上回っています。ただ、世界平均も大幅に上昇しているため、世界と比較してしまうとまだまだ見劣ります。
ちなみに米国はPER、PBRの観点からは最も割高となっている国になります。PERは23.2倍、PBRは4.4倍です。配当利回りも1.48%と割高(配当性向:34.3%)です。
一方、米国のROEは脅威の19.0%であり、この高ROEがPER、PBRの観点からの割高さを肯定するものと推察されます。
現状のROE(日本9.58%、米国:19.0%)と配当性向(日本32.85%、米国:34.4%)が継続すると仮定した場合、30年後にBPS、EPSがどのように推移するか見てみます。
初年度のBPSを100としてグラフを作ると以下のようになります。なお、議論の簡略化のため、配当に回った額以外のEPSは全て時期BPSに組み込まれる(自己株式取得や株主優待には回らない)ものとします。
つまり、短期的に見ると割安に見える日本株ですが、現在のROEが継続することを前提に将来の指標で見ると、米国株のが割安ということになります。
続いて、金額面から見ていきます。
日本株の時価総額は4.1兆ドル(2023年8月時点でのドル円相場:145円で計算すると約600兆円)であり、2013年4月(2.9兆ドル:当時の相場で約300兆円)と比較すると、ドルベースで4割強の増加、円ベースで2倍となっています。時価総額で300兆円の増加、素晴らしいですね。
続いて家計の金融資産構成を見てみましょう。
2013年4月の時点では、日本の家計の金融資産(約1500兆円)のうち株式に向けられているのはわずか5.7%(金額にして85兆円程度)でした。一方、2023年3月末時点では以下のように、日本の家計の金融資産(約2043兆円)のうち株式に向けられているのは11.0%(金額にして225兆円程度)大幅に増加しました。
割合としてはほぼ倍増、金額にして140兆円もの増加です。最近、ニュースだかYouTubeだかで、上記データをもって「わずか11.0%しか株式に振り分けられていない」ということが強調されていましたが、この10年でここまで改善したことは特筆すべきことだと思います。2024年から始まった新NISAにより、この数値もさらに改善することが期待されます。
これだけ個人が株に回す金額が増えたのだから、日本の株式市場における個人の存在感も増してきたことでしょう。2013年の時点では個人投資家のシェアは20%弱でしたが、今(2022年度のデータですが)はというと…。
残念ながら大きな変化はなく、17%程度で安定(厳密にはやや減少)しています。個人が株式に向ける金額が増えたのは確かですが、全てが日本株に向かっているわけではないですし、日本株全体の時価総額も増えていますからね。一方、外国法人等の割合はやや上昇し、30%程度で推移しています。以上長くなりましたが、まとめてみます。
- 2023年8月の時点において、PER、PBR、配当利回りいずれの観点から見ても、世界平均と比較して日本株は割安である
- 2023年8月の時点において、PER、PBR、配当利回りいずれの観点から見ても、世界平均と比較して米国株は割高である
- 2023年8月時点でのROEが将来も継続すると仮定した上で長期で見た場合、日本株より米国株の方が割安である
- 10年前と比較すると、日本の家計の金融資産に占める株式等の割合はほぼ倍増し、金額ベースでは140兆円増加した
- 日本株の保有主体のシェアを10年前と比較すると、日本人個人の割合はやや減少、外国法人等の割合はやや増加した