2024年4月20日土曜日

日本の株式市場概況-外国人はやはり短期的?

 今日も昔の記事の焼き直しです。

10年以上前になりますが、日本の株式市場をざーっとデータで概観した記事を書きました。

ネガでもポジでもありません。

この記事を最新のデータで焼き直してみます。

当時の記事によると、2013年4月時点での日本株は以下のような状況でした。

 

実績PER:26.3倍(世界平均:16.3倍)

実績PBR:1.5倍(世界平均:1.9倍)

ROE:5.70(世界平均:11.66%)

配当利回り:1.61倍(世界平均:2.25倍)


PERや配当利回りは世界平均と比較すると40%ほど割高、という状況でした。10年以上経過した今、このあたりの数値はどう変わったのでしょうか。残念ながら参考にしていたウェブサイトは2023年9月以降データが更新されていないので、2023年8月の数値となります。


実績PER:14.6倍(世界平均:17.8倍)

実績PBR:1.4倍(世界平均:2.7倍)

ROE:9.58%(世界平均:15.16%)

配当利回り:2.25%(世界平均:2.13%)


10年前とは様変わりしています。

日経平均株価は3倍近くに上昇したにもかかわらず、PER、PBR、配当利回りのいずれも割安方向に変化し、かつ、世界平均と比べても割安という状況です。たんに日本の株式市場に資金が流入しバブったという訳ではないことの証左と言えるかと思います。なお、配当利回りは上昇しているものの、配当性向(=配当*100/EPS=配当利回り*PER)は32.85%(世界平均:37.91%)とむしろ低下していました。配当利回りの上昇は、東証のPBR改善要請に起因するものと想像していましたが、実際は単に株価水準の低下に起因するもののようです。2023年8月のデータなので、東証のPBR改善要請の影響はまだ目に見えていないのかもしれないですね。ROEもかなり改善し、伊藤レポートの目標水準である8%を大きく上回っています。ただ、世界平均も大幅に上昇しているため、世界と比較してしまうとまだまだ見劣ります。

ちなみに米国はPER、PBRの観点からは最も割高となっている国になります。PERは23.2倍、PBRは4.4倍です。配当利回りも1.48%と割高(配当性向:34.3%)です。

一方、米国のROEは脅威の19.0%であり、この高ROEがPER、PBRの観点からの割高さを肯定するものと推察されます。

現状のROE(日本9.58%、米国:19.0%)と配当性向(日本32.85%、米国:34.4%)が継続すると仮定した場合、30年後にBPS、EPSがどのように推移するか見てみます。

初年度のBPSを100としてグラフを作ると以下のようになります。なお、議論の簡略化のため、配当に回った額以外のEPSは全て時期BPSに組み込まれる(自己株式取得や株主優待には回らない)ものとします。

BPSの推移
EPSの推移
30年後、日本はBPSは610、EPSは58となる一方、米国はBPSは3253、EPSは618となります。
つまり、30年間同じ株価水準であったとすると、30年間でPERとPBRは以下のように推移することになります。
日本のPER:14.6倍→2.4倍
日本のPBR:1.4倍→0.23倍
米国のPER:23.2倍→0.71倍
米国のPBR:4.4倍→0.14倍
いずれの指標でも米国のが割安となることがわかります。

つまり、短期的に見ると割安に見える日本株ですが、現在のROEが継続することを前提に将来の指標で見ると、米国株のが割安ということになります。

続いて、金額面から見ていきます。

日本株の時価総額は4.1兆ドル(2023年8月時点でのドル円相場:145円で計算すると約600兆円)であり、2013年4月(2.9兆ドル:当時の相場で約300兆円)と比較すると、ドルベースで4割強の増加、円ベースで2倍となっています。時価総額で300兆円の増加、素晴らしいですね。

続いて家計の金融資産構成を見てみましょう。

2013年4月の時点では、日本の家計の金融資産(約1500兆円)のうち株式に向けられているのはわずか5.7%(金額にして85兆円程度)でした。一方、2023年3月末時点では以下のように、日本の家計の金融資産(約2043兆円)のうち株式に向けられているのは11.0%(金額にして225兆円程度)大幅に増加しました。

割合としてはほぼ倍増、金額にして140兆円もの増加です。最近、ニュースだかYouTubeだかで、上記データをもって「わずか11.0%しか株式に振り分けられていない」ということが強調されていましたが、この10年でここまで改善したことは特筆すべきことだと思います。2024年から始まった新NISAにより、この数値もさらに改善することが期待されます。

これだけ個人が株に回す金額が増えたのだから、日本の株式市場における個人の存在感も増してきたことでしょう。2013年の時点では個人投資家のシェアは20%弱でしたが、今(2022年度のデータですが)はというと…。

残念ながら大きな変化はなく、17%程度で安定(厳密にはやや減少)しています。個人が株式に向ける金額が増えたのは確かですが、全てが日本株に向かっているわけではないですし、日本株全体の時価総額も増えていますからね。一方、外国法人等の割合はやや上昇し、30%程度で推移しています。

以上長くなりましたが、まとめてみます。

  • 2023年8月の時点において、PER、PBR、配当利回りいずれの観点から見ても、世界平均と比較して日本株は割安である
  • 2023年8月の時点において、PER、PBR、配当利回りいずれの観点から見ても、世界平均と比較して米国株は割高である
  • 2023年8月時点でのROEが将来も継続すると仮定した上で長期で見た場合、日本株より米国株の方が割安である
  • 10年前と比較すると、日本の家計の金融資産に占める株式等の割合はほぼ倍増し、金額ベースでは140兆円増加した
  • 日本株の保有主体のシェアを10年前と比較すると、日本人個人の割合はやや減少、外国法人等の割合はやや増加した
「外国人は(為替の影響も含めて)割安な日本株を積極的に購入する一方、日本人は(為替の影響も含めて)割高な米国株を積極的に購入している」と論じている方がいらっしゃいました。
短期的な見方をすると(現時点でのPER、PBR、配当利回り等から判断すると)上記認識は間違いではないな、と感じます。一方、現状のROEが継続することを仮定した上で長期的な見方をすると、上記認識は誤りということになります。
むしろ、「外国人投資家の目線は極めて短期的である」というステレオタイプな意見をサポートする情報なのかもしれません。

なお、確定拠出年金を除くと、私個人はこれまで米国株含め海外株式を購入したことはありません。

2024年4月15日月曜日

「セルインメイ(Sell in May)は現代日本でも成り立つ」とは言えない

先日のPostでアノマリーについて検討しました。
以下の図からわかるとおり、「4月と11月が強く、1月と8月が弱い」が結論でした。
2013年以降の日経平均株価の月別平均変化率(%)

さて、改めてよく見てみると、5月は+2.18%であることに気付きました。よくセルインメイ(Sell in May)と言われますが、少なくともこの10年を振り返ると5月はむしろ強いように見えます。日本ではそもそもSell in Mayは成立していないのか、それともこの10年だけは特殊だったのか、少し探ってみることにします。
この10年間を振り返ると、5月は+が8回、-が2回と、勝率は8割でした。最大のプラスは2020年で+8.3%、最大のマイナスは2019年で-7.4%でした。
これだけみると、日本ではむしろBuy in Mayのが適切に見えてしまいます。とはいえ、2014年から2023年という10年間は日経平均株価が2倍以上上昇した特殊な時期ですので、もう少し期間を広げてみたいと思います。あまりに昔に遡っても仕方がないので、21世紀に絞り、2001年から2023年の23年間を振り返ってみます。
結果は以下のとおりです。
日経平均株価の暴騰率(4月末日の終値〜5月末日の終値までの変化率)
5月は+が14回、-が9回で、暴騰率は+0.3%でした。勝率は6割以上ですし暴騰率もわずかとはいえ+であることを踏まえると、21世紀を対象として考えても、少なくとも「Sell in May」が成立しているとは言い難いです。
ただ、勝率の割に暴騰率が低めであることからわかるとおり、「マイナスになった場合のマイナス幅は大きめ」ということは言えるかもしれません。実際、暴騰率の絶対値で見ると、上位3つはいずれもマイナスになります(2010年、2012年、2006年)。
以上より、5月の日経平均株価の動きは以下のようにまとめることができます。
  • ここ10年に限ると、Sell in MayではなくBuy in Mayである
  • 21世紀(2001年〜2023年)に対象を広げても、勝率・暴騰率ともに5月はpositiveであり、「セルインメイ(Sell in May)は現代日本でも成り立つ」とは言えない
    • ただし、マイナスになった場合の下げ幅は少し大きい傾向がある

2024年4月13日土曜日

令和の株式アノマリー:子供の夏休み中は株から離れよう

以前株式アノマリーに関する記事を書いたのですが、いまだにアクセス数も多く、皆様の関心の高さがうかがえます。

21世紀の株式アノマリー:ハロウィンで買って桜で売れ

この記事を書いた動機は、巷で言われているアノマリー(「稲穂」だの「餅つき」だの、昭和のかほりがプンプンするものも多い)が今でも通用するものなのか、を検証することでした。

検証結果としては、昭和のアノマリーは2012年当時で既に成立していないと思われるものも多くなっていることがわかりました。

その上で、「ハロウィンで買って桜で売る」が21世紀における正しい行動であると締めました。

この検証を行なってから10年以上経過し、その間日経平均株価も4倍に上昇しました。

日経平均が10,000円を割っていた時代のアノマリーが今でも通用するのかを検証するため、改めて最新データをもとに検証してみました。

前置きが長くなりましたが早速データを見ていきましょう。

調査対象期間をいつにするか迷いましたが、令和だけに絞ると流石にサンプル数が少なくなりますので、アベノミクス以降に絞って調査することにしました。

2013年以降の日経平均株価の月別平均変化率(%)


X月の変動率(%)は、X月初営業日~翌月初営業日までの変動率を表します。

縦軸は日経平均株価の変化率(%)です。
絶好調の環境だったので、基本的にアゲアゲですね。
その中でも落ち込みが大きいのは8月と12月。
(3月も少し下げてるが、配当調整すると実質の影響は気にするほどではないはず)
偶然か、欧米の方々のsummer vacationとChristmas seasonのlong vacationの時期に下げている形になります。

この傾向は以前調べた2001-2012年(一部2011年)のデータとは少し異なります。
2001年から2012年(一部2011年)の日経平均株価の月別平均変化率(%)

2001-2012年のデータでは12月が最強で3月がそれに続く形ですが、前述のとおり令和では12月は最弱の1つ、3月もマイナスです。
同じ21世紀という括りでもこれだけ傾向が異なるので、少なくとも昭和のアノマリーを盲目的に信じるのは大変危険なことだけはわかります。

最後に、2001年から2023年までのデータをまとめてみました。
2001年以降の日経平均株価の月別平均変化率(%)

4月と11月が強く、1月と8月が弱いです。

以上、いくつかデータを見てきましたが、一貫しているのは4月は強く、8月は弱いということのようです。

「子供の夏休み中は株から離れよう」が令和時代の動き方なのかもしれません。

2024年4月9日火曜日

今現在の話

前回のpostに記載したとおり、株式投資復帰元年である2023年は+82.6%(日経平均:+28.2%)でした。

復帰2年目にあたる2024年は以下のとおりです。

1月:+28.0%(日経平均:+8.4%)

2月:+  0.2%(日経平均:+7.9%)

3月:+  9.9%(日経平均:+3.1%)

2024年累計:+41.0%(日経平均:+20.6%)

申し分ない成績ですが、3月中旬までは信用でかなりレバレッジをかけていたので、リスクを取った分だけ結果を残せただけです。

(3月中旬に一旦信用分は全て売り切りましたが、昨日、今日でちょっと信用で買いました)

本日時点での持株ですが、主力はKPPグループホールディングス、石塚硝子、メタルアート、錢高組の4銘柄です。その他細々と、計8銘柄保有しています。

KPPグループホールディングスはちょっとした思いがあり保有しています。バリュエーションだけ見るとぶっちゃけそれほど魅力的ではありません。

石塚はSBIリーシングに代わる主力としてちびちび買っていった銘柄です。ある程度期待しています。

メタルアートは昨年から持ち越しており、ダイハツ問題をモロに喰らってしまいました。下がった後買い増し(信用含む)して、ある程度は取り返しましたがそれでもまだギリマイナスだと思います。銘柄としては依然として悪くないとは思うのですがいまだに株価は冴えず、もう少し様子見かな、というところです。

錢高組は昨日、今日である程度買いました。

その他ちょこっとずつ持っている銘柄は面倒なので紹介しませんが、NISA枠は下記銘柄です。




2024年4月5日金曜日

株式投資復帰後

 本日は株式投資に復帰後のお話です。

2023年に株式投資を再開しました。

復帰後久々の投資は東京電力でした。

東京電力については株式市場から離れている時期も注目しており、極めてリスクの低い投資先だと睨んでいました。

久々の投資でしたがいきなりフルスロットルで、信用でかなりレバレッジをかけた上で東京電力に一点集中投資しました。

その後、思惑通り十分な上昇が認められたことから、9月に全株売却し、キャッシュポジション100%にしました。

その後、昔ながらのあまり大きくない銘柄で割安な銘柄3つに分散して投資しました。

ただ残念ながら2023年のうちは東京電力以外は大きな利益はでず、2023年は+82.6%で終わりました。

その間、ちょこちょこ銘柄を入れ替えたりしつつ、2024年は以下のような成績です。

1月:+28.0%

2月:+  0.2%

3月:+  9.9%

1月は主力だったSBIリーシングサービスが好調でした。信用でレバレッジをかけて買っていたので、1ヶ月でかなりの利益となりました。

2月はSBIリーシングサービスやオーナンバ、クリヤマホールディングスが奮闘しましたが、主力の1つであるKPPグループホールディングスがダメで、かろうじて月間プラスを死守した感じでした。この間、SBIリーシングサービスは信用分は全部放出し、代わりにいくつか別銘柄を購入。

3月は主力のKPPグループホールディングス、SBIリーシングサービス、石塚硝子が頑張りました。流石に相場の過熱感があるように感じたので、3月中旬の時点で信用は全て売り切りました。SBIリーシングサービスも現在は持株ゼロです。

2024年4月3日水曜日

撤退から復帰までのお話

 先日のpostで私が株式投資を始めてから撤退するまでのお話を紹介しました。

今回は、撤退した後のお話です。

2013年を最後に株式投資から撤退し、資金は全て引き上げました。

私が撤退した頃は日経平均株価は15,000円程度。

当時はそれでもひどく割高のように思っており、そのうち株価は戻ってくると信じていました。

12,000円まで下がったら資金の半分を入れて、10,000円を切ったら現物で全力、8,000を切ったら信用も含めてガンガン行こう、とか考えていました。

投資を始めた2010年当時から考えをアップデートできなかったのですね。

私の願いも虚しく、日経平均は12,000を切るどころか、20,000、25,000、30,000とうなぎのぼり。

この頃は「株式投資」という言葉を聞くことすら苦痛でした。

私と同じような時期に一緒に投資をしていたブログ仲間たちが次々と巨万の富を築いていくのを見るのが辛く、完全に情報をシャットアウトしていました。

そうこうするうちに2023年になりました。

もうこの頃になると、自分の考えが誤りであったことを受け入れられるようになりました。

雑誌等で「今の株価水準は高すぎる」と不安を煽っておきながら何事もなかったかのように戻ってくることに抵抗を感じていましたが、10年も反省していたのでまぁ良いだろう、と自分を許せるようにもなりました。

このような背景のもと、2023年より株式投資の世界に戻ってきました。

続きはまた次のpostで。

2024年4月1日月曜日

復帰しました

大変ご無沙汰しています。

もうこんなブログを読んでいる人もいないと思いますが、また少しずつ書いていきたいと思います。

久しぶりの投稿なので少し自己紹介させていただきます。

私は2010年9月から株式投資を始め、2012年頃からdorabaoという名前でこのブログを書いていました。

当時の投資成績は以下のとおりです。

2010年:+67.80%(9-12月のみ)

2011年:+  5.45%(日経平均:-17.34%)

2012年:+91.50%(日経平均:+22.94%)

2013年:+44.52%(日経平均:+53.04%)

2011年までは現物投資のみ、2012年以降は信用も活用しつつ、このような成績を残していました。

こんなところでも紹介いただいていました。

https://value-ranking.seesaa.net/index-595.html

2012年中頃まではモチベーション高く投資に打ち込んでいたのですが、アベノミクスに伴う株高に違和感を感じ、徐々にやる気を失っていきました。

2013年は一応投資は続けていましたが、キャッシュポジションもかなり高く、結果的に日経平均にすら及ばない成績となってしまいました。

「日経平均にすら勝てないのであれば投資する資格はない」

「今の株価水準は高すぎて買いたい銘柄が見つからない」

といった気持ちが強くなったため、2014年に株式投資から完全撤退しました。

雑誌とかにもちょこちょこ登場したりしていましたが、下記記事を最後に完全に投資の世界から離れることにしました。

ちょっと長くなりましたので、撤退中から復帰までの話はまた次回。





Xはこちらから。