2024年6月23日日曜日

2024年株主提案研究 File 01 コメリ

今年も活発に行われている株主提案。

株主総会もそろそろピークを迎えるので、いくつかの株主提案をピックアップし、提案内容の確認、総会決議結果、株価への影響等を見ていきたいと思います。

まずは8218_コメリ。

コメリの株主提案


株主提案日:2024/4/18

株主提案受領発表日:2024/4/23

会社見解表明日:2024/5/14

株主総会日:2024/6/21

提案者:NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE NVI01(代理人 日本バリュー・インベ スターズ株式会社)

株主提案内容:

定款一部変更(剰余金の配当等の決定機関)の件

定款上、剰余金の配当等は株主総会の決議によらず取締役会の決議で決めることができるようになっている(以下参照)が、これを「取締役会の決議によって定めることができる。」に変えろとの提案です。

当会社は、剰余金の配当等会社法第459条第1 項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって定める。

②剰余金処分の件

上記①が承認可決されることを前提に、配当性向50%になるよう期末配当を支払えとの提案です。


①が一見分かりにくいですね。

定款のうち「剰余金の配当の決定機関」は、通常、「計算」という項に定義されています。

決定機関に関する記載は大きく以下の4つに分けることができます。

1. 株主総会の決議によって配当を行う

2. 取締役会の決議によって定めることができる

3. 取締役会の決議によって定める

4. 記載なし

4の場合は株主総会の決議によることになるので、実質は「株主総会で決める」「取締役会で決めることができる」「取締役会で決める」の3パターンと言っても良いです。

コメリは現状、例外なく取締役会で期末配当を決めることとなる「3. 取締役会で決める」のパターンなので、一つ緩い基準である「2. 取締役会で決めることができる」にしろ、との提案です。

提案理由は以下の通りです。

  • 過去4年における連結配当性向が10%台という極めて低い水準
  • 設備投資額はほぼ減価償却額と同水準
  • M&Aも過去10年以上実績がない
  • 結果、自己資本比率は10年前の45%から直近では65%を超える水準まで上昇
  • M&Aを含む将来の成長投資の可能性を理由に低水準の配当性向を維持しているが、成長投資案件がない場合には株主還元に振り向けるなど、柔軟なキャッシュアロケーションを行うべき
  • 株主が配当政策に関する上述のような意思表示を株主総会で行う権利を認めていない
  • 取締役会で配当額を決めることは可能ですが、株主も配当に関する株主提案を可能とし、どちらが望ましいかを株主が総会で決定できる様にすべき

ざっくりいうと、「成長投資を理由に配当性向を抑えているが、実際には全然使ってないじゃん。配当上げてよ。現状の定款だと配当に関する株主提案すらできないから、まずは定款を変えて株主も配当に関する提案ができるようにしようよ。」というところです。で、①が承認された場合は早速この総会で配当性向50%を意図した提案(提案②)をしているという形です。

定款変更の提案はとても真っ当な内容だと思いますが、それに対する会社側の回答は以下の通り。

「配当額を機動的に決定できるようにするため、・・・株主総会ではなく取締役会の決議により行えるようにしております。」

過去にもたくさん「配当決定機関変更」の株主提案はありましたが、回答はどこも同じで「機動的に決定」というところを理由にしています。株主としては機動的に決定してもらうメリットはかなり限定的なので、これは会社都合の理由と言ってもいいでしょうね。

上記お決まりの文言の後、コメリ側は色々「想い」を語り始めています。

  • これらの市場は流通構造が多段階で社会的 コストが非常に高く、お困りのお客様が非常に大勢いらっしゃいます。敢えて、この難しい分 野に挑戦し、世の中にご利益を提供するべく、中長期的な視点で取り組んでおります。
  • 上記の基本方針に従い、配当及び自己株式取得等の資本政策に係る事項は、当社グループの 企業理念である『コメリのねがい』 
    • 世の中の人々の幸せのために この仕事がありますように ここに集う人々の幸せのために この仕事がありますように この企業に縁ある人々の幸せのために この仕事がありますように
流石に「ねがい」を述べるのはご勘弁いただきたいが・・・。

その上で以下のように締めくくっています。

本株主提案は、当社グループの置かれている経営環境や事業特異性等が考慮されていない短期的な視点での提案であり、今後の当社グループの事業運営や資本政策の柔軟性や機動性が損なわれ、株主の皆さまにとってメリットがないと考えます。 

これは全くもって意味不明で、この定款変更がなぜ「短期的な視点での提案」なんですかね。そして株主にとってメリットがないだなんて、勝手なことを言わないでください。

先ほど配当決定機関に関する定款には4パターンあると記載しましたが、コメリのように株主からの提案を認めないパターンの定款は少数派です。

東証P企業に絞って現在全社の定款を調べようとしているところです。とりあえず会社コードが若い順に始めて165社調べ終わりましたが、コメリのように株主からの提案を認めないパターンの定款は18社(=10.9%)です。

コメリ的には、81%の会社の定款は短期的なんですかね。株主にとってメリットのない諦観なんですかね。

反対するのはいいですが、もう少しまともな理由を書きましょうよ、と。②への反対理由ならまだ分かりますが。この反対文を書いた人とは全く話が合わない気がしますし、この会社は自分にとって全く投資対象にはできないことがこの文書からもよく分かりました。

一方、提案②に対する反論は「自己株式の取得を3期連続でやっており、それと合わせた総還元成功は30%以上だ!」というものです。

株主提案に記載されている内容を踏まえると30%でも全然足りない、というところだと思いますが、会社としては50%だと「短期的な株主還元に着目」したものであり、「中長期的な当社グループの成長戦略のための成長基盤投資財源が損なわれ、当社グループの競争力を低下させる恐れがある」んですって。なんで30%はよくて50%はダメなんですかね。

その辺りの具体的な説明は全くないまま、ただただ反対しているだけにしか見えません。

このようによくわからない会社見解でしたが、総会での決議はどうだったでしょう。

コメリ議決権行使結果

定款変更提案の件:否決(賛成率31.45%)

剰余金処分の件:未採決(定款変更提案が否決されたため)

ひどいですなぁ。

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